TX 『Dr. リンにきいてみて!』やはり今クールで終了で、来週が最終回。地球が滅亡するらしい。どう決着つけるのだろうか。これで声優 KANA の声も聞けなくなるのか。このアニメのオープニングは結構気に入っていた。オリジナル・アレンジの他に、ハイ・エナジー(ユーロ・ビート)アレンジやトランス・アレンジまである。
『現代用語の基礎知識 2002』「ポピュラー音楽用語の解説」(湯川れい子)には、「トランス」の項目がない。項目どころか、一語も触れられていない。トランスはポップスの最先端なので、是非とも載せられているべきだ。用語解説は NTV 『THE WIDE』でおなじみの湯川氏。お願いしたい。
湯川氏は、「世界より国内へ、テクノロジーよりぬくもりへ」などとして、氷川きよしや津軽三味線の吉田兄弟などを指して、こんな時代に強味(ママ)を発揮してくれるのはフォークや民族楽器で、民謡、演歌系が、もっと別な形で台頭してくるかも知れないという。さらには、アメリカ主導のグローバル化への抵抗が、思いもかけない世界危機を招いたように、人の目も耳も心も、世界よりは国内へ、テクノロジーよりはぬくもりへと向かうことになるだろうという。
全く同意できない。私からすると、氷川きよしや吉田兄弟は見世物小屋的な際物であって、言わばその奇形が一時的に世間の耳目を集めているだけである。氷川きよしの曲などは、普通の演歌歌手が歌っていれば、鼻も引っ掛けないような凡庸な曲だが、氷川きよしという「異常な」キャラクターの演歌歌手が歌うことによって、見世物小屋の奇形児と同じ関心を集めているものである。吉田兄弟も同様で、吉田兄弟が 60 歳なら何の注目も集めない。彼らが、若者でありながら津軽三味線という非常に老人的な楽器を演奏するということが、同様に奇形児として見られているわけである。
また、「アメリカ主導のグローバル化への抵抗が、思いもかけない世界危機を招いた」とは、一体何を指して言っているのか。私には何ら思い当たるものはない。そして、「世界よりは国内へ」「テクノロジーよりはぬくもりへ」などという現象があるとすれば、それは常に老人的頽廃であって、ポップスの送り手であり受け手でもある若者とは無縁の現象である。ポップスは、常に青年的視点で語られなければならない。これらの点で、私は年配の湯川氏に現代ポップスを解説する能力があるのかどうか疑問を抱く。
ワールド・ミュージックと呼ばれるような傾向は、確かに存在すると私も考える。しかしそれは、一部の民謡学者が喜んで言うように、「現代の音楽状況が行き詰まっているから」ではない。行き詰まりを言うならば、むしろ民謡こそその存在自体が始めから行き詰まっているといえる。なぜなら、民俗音楽には、原則として一切新しい要素を付け加えることができず、永遠に過去に固定された形式のみを厳として継承しなければならないからである。全く同じ音楽を未来永劫演奏し続けなければならない。そこには何の発展もない。
私は、世界の民俗音楽が多く流通するようになったのは、現代ポップスに対する反動ではなく、民俗音楽が多く CD に収録され、流通するようになったという一種の技術革新によるものであると考える。CD の価格は、20 年前の LP レコードの価格とほとんど変わらない。コンサート・チケットの価格は倍になっているから、他の物価と比較しても、ディスク・デヴァイスの価格は 20 年前の半額であるといってよいだろう。それだけ入手しやすくなっているということは、流通量も種類も増えるということである。民俗音楽の流通が増える一方で、現代ポップスへの需要は決して減っていない。20 年前は、レコードが 100 万枚以上売れるというのはよほど限られたアーティストのみだったが、今ではざらである。
現代ポップスについては、私個人としては、少年時代からドラム、ベース、ギター、ヴォーカルという何十年も昔からの編成による音楽に飽き飽きしているのだが(だからコンピュータ制御の電子音楽という、ポップスに新平原を切り拓いた YMO に傾倒したのである)、今でも主流を保っている。
小澤征爾&ヴィーン・フィルの『ニューイヤー・コンサート 2002』がオリコン・ウィークリーでポップスを抑えて最高位 2 位を記録したというのも、今年の音楽界の一つのトピックだろう(売上 50 万枚突破)。クラシックもよく行き詰まりが言われるが、決してそうではないということを教えてくれている。ヴィーン・フィルは、世界最高のオーケストラの一つで、そのまろやかな音色と優美な演奏で、私の最も好きなオケでもある。私は交響曲については、極力ヴィーン・フィルのものを集めている。ヴィーン・フィルが演奏すると外れがない。一般向けには、世界最高オケの両横綱のもう一方、ベルリン・フィルの演奏も外れがないことを付け加えておこう。演奏の精確さでは世界一であると言われる。またレーベルで言えば、黄色いドイツ・グラモフォン・レーベルは外れがない。初心者にはお奨めだ。クラシックは、オケや指揮者によってかなり演奏の質にバラつきがあるので、初心者は注意したい。
ここ数年のポップスのトピックスは、例えばテクノとヒップ・ホップとラテンその他が融合したような特異なブラック・ミュージックである(マイアミ・)ベースの類、そして最近ではテクノの派生であるトランスが挙げられる。中でも『BASS PATROL Vol.14』(AVEX)は傑作だと思う。「COUCHIE POP」と「IT'S LUSCIOUS」(これが最高傑作であると考える)は、図太いベースに乗せたムチャノリ高速ラップが快感で、聴き手に有無を言わさず押さえ込む力を持っている。私は 2〜3 年前はベースばかり聴いていた。ベースはたいてい高速でうるさいのだが、ミディアム・ベースと呼ばれるヴォーカル中心の落ち着いた傾向の曲もある。こちらでは、『LOVE LOVE BASS』(AVEX)を推薦しておこう。特に「I Want U Babe」が名曲。トランスのアルバムは日本では去年出始めたばかりだが、とりあえず『Cyber Trance』(AVEX)を挙げておこう。大ヒットした「Out Of The Blue」は名曲。シンセ・ストリングスで奏でられる美しいメロディに注目してほしい。
(続く)